最愛の母が亡くなってから、1年も経たないうちに、相次ぎ父も他界した。
遺された子供は兄弟3人で、長男は大学卒業と同時に上京し、仕事も順調で、結婚もして家庭を築いている。
また、次男夫婦が両親と同居し、衣食住の面倒をみていたとのこと。
母が亡くなる前までは、長男は正月すら帰省することもなく疎遠状態であったが、父親の葬儀では長男として、喪主の勤めをしっかりと果たしていた。
無事に葬儀も終え落ち着いたころ、遺産分割に関する協議を進めた結果、法定相続人で分配することで協議が終わった。
しかし数日後、父が亡くなる直前に残した遺言書が発見されるも、腑に落ちない点があり、早速、次男が遺言書をカメラで撮り、兄弟全員に画像ファイルを送信した。
その内容とは、土地建物の権利は、長男が相続し、預貯金は残りの2人で分配と記されている。
この遺言書を見た次男は、正に寝耳に水であり、遺言書のことは父親からは何も聞かされていなかった。
しかも、家屋敷の評価額は1億円以上、預貯金や有価証券は合わせても、6000万円程であるから大半は長男が相続することになる。
次男はもちろん、3男も、こんなのは不平等であり、納得できないと主張。
今まで次男は実家で両親の介護にあたり、献身的に孝行していたからなおさらである。
再び、兄弟が集まり協議した結果、遺言書の中に加筆されたような筆跡があるので、偽造遺言書であるかを確かめるため、筆跡鑑定および指紋鑑定を依頼することになった。
遺言状の筆跡鑑定の結果、加筆された箇所を除いては、筆跡は父のものと合致。
加筆された筆跡については、不合致の方向性が認められた。
また、偽造された遺言書からは、父親の指紋と第三者の指紋が検出された。
従って、加筆された筆跡が父のものでないのであれば、誰かが遺言書に手を加えたことになり、その遺言書の加筆箇所については無効と考えられる。
再び、兄弟間で、協議し第三者の指紋が誰のものかを鑑定することとなった。
先ず、次男は、その遺言書に触っているので、とりあえず除外することとし、長男、三男の指紋と照合鑑定した結果、長男の指紋と合致した。
長男は、その遺言書は見たことも無いといっていたが、事実、遺言書に長男の指紋が着いていたことから、その主張も崩れ、遺言書に加筆したことも白状したとのこと。
これで、財産分与に関する相続遺産分割協議書は、法定相続人で均等に分配することとなったが、長男の今回の遺言書の偽装による信用の失墜で、長男とはますます疎遠になってしまったという悲しい結末である。
【参考情報】
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