会社内で度々、手提げ金庫の現金が合わなくなることがあり、社内の誰かのしわざではないかと考えていたころ、従業員が盗難にあうという事案が発生した。
被害にあった従業員が、自分のデスクに置いておいた財布が無い事に気づき、上司にそのことを報告した。
その日は財布の発見には至らなかったが、後日、財布だけが発見された。
会社側としては、盗難事件として対応することとなり、弊社に相談する運びとなった。
依頼者側としては、容疑性の高い人物が財布の発見者であることから、財布から指紋を検出しても、「事件後に触った」と言い逃れされてしまうのでは?と考えており、どうしたらよいのかアドバイスが欲しいとのことである。
今回、証拠物件である財布は、容疑性の高い社員が事件後も触っていることから、財布だけではなく、手提げ金庫に入っていた現金封筒も鑑定資料として採用し、被疑者の指紋は、秘匿採取することを提案。
※秘匿採取:対象者には告知せず、指紋を採取する方法
後日、指紋検出を行い、関係者の指紋を除外鑑定した結果、現金封筒からは指紋が4個検出された。
財布からも、持主以外の指紋が1個検出された。
それぞれを照合した結果、判定は不合致であった。
しかし、鑑定指紋と対象指紋は合致しないものの、いずれも弓状紋であるため、同一人物で「指が違う」可能性を排除できない。
※弓状紋は、親子や兄弟の血縁関係であれば同じ紋様であり、日本人の約1割にあたる特異な紋様である。
※指紋鑑定では、指紋の特徴点12点が一致して合致判定となる。
今回のこの不合致判定は、指紋の特徴点が7割ほどは合致しているため、被疑者の指紋に近い判定であるが、鑑定の世界では、結果は中間判定はなく、白か黒か、0か100のどちらかでなくてはならない。
今回の結果を踏まえ、再度、依頼者に協力してもらい、可能性にかけて、被疑者の触った書類やクリアファイルを追加資料として回収してもらった。
その際、指紋のズレや擦れが出ないよう方法をレクチャーして実施いただいた。
その結果、見事、鑑定指紋と対象指紋の12点の一致を確認、合致判定となった。
これらの証拠をもとに、本人を問いただすと、犯行を認めたそうで、本件は一件落着となった。
【参考情報】
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