東京都内在住の64歳主婦からのご依頼。
家庭内でたびたび財布から現金が消失する家庭内窃盗事件が発生しており、決まって、盆や正月、法事などの親戚が集まるときに限って行われる。
最初のうちは、「気のせい」かと、あまり気に止めていなかったが、出前を取った際の支払いのときにお金が足りないことがあり、これはおかしいと思ったのがことの始まりであったそう。
相談者は、せっかく家族が集まっていたので、その場では騒ぎを起こして気まずい雰囲気にはしたくないという気持ちから、後日、警察に相談しに行くことに・・・。
警察に相談した結果、「空き巣や泥棒でない限り、家庭内窃盗や家族間の盗難には対応できない」と言われてしまったとのこと。
弊社へ相談に来られた相談者は、犯人は家族か親戚のうちの誰かだと思われるので、家庭内窃盗の犯人を特定し、お灸を据えたいとの希望でした。
検体を拝見したところ、鑑定物は、皮革製の長財布で、最も指紋採取や照合鑑定が難しい部類のものであった。
※財布に付着した指紋の油成分を財布の革が吸収してしまう性質上、遺留指紋の劣化が速いため。
早急に指紋検出の作業が必要であると判断したため、即日、財布をお預かりし、指紋採取を行うこととした。
指紋検出チームにて作業をすすめると、困難とされている「皮革製品の財布」からの指紋の採取に成功、さらに財布の中の紙幣からもいくつかの指紋が採取された。
持ち主である依頼者の指紋を、財布と紙幣から採取した指紋から除外鑑定し、残った指紋が2個。
この指紋は、まさに家庭内窃盗の犯人のものである可能性が高い。
次のステップである、対象指紋との照合となった。
まずは、家族の指紋から照合し、不合致であった場合、親戚関係の指紋と照合する予定である。
しかし、後日、依頼者から「照合鑑定は行わない」という連絡を受けた。
その理由を聞いてみると、対象資料として、家族5名の指紋を採取する予定であったが、家族会議の際、持ち主ではない指紋が財布から検出されたことが話題となり、犯人捜しで盛り上がっていた中、追い詰められた精神状態からか、相談者の次男が犯人として名乗り出たそうである。
次男は、遊ぶ金欲しさの犯行と認め、度々、親の財布から現金を抜いていたことを自供したという。
このように、家族間や身内などでの盗難や家庭内窃盗事件では、指紋の採取、検出のみで、照合鑑定まで行わずに、無事に解決する案件も少なくありません。
【参考情報】
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